2015年10月29日

コラム9/使い勝手を編み込む「間取り」 

 多くの建主にとって、「家」は街並やコンセプトといったものよりも「使いやすさ」が最も重要で、満足度に大きく影響します。そのため、設計する際にはこの「使いやすさ」について建主の要望に耳を傾けるのは至極当然のこととなります。一方で、建主の要望どおりの「使いやすさ」を織り込んだだけの住宅は、新鮮味のないものになりがちです。「使いやすさ」というものがこれまでの生活で慣れ親しんだものと同じであることが多く、例えばマンション住まいをしていた人が、「使いやすさ」だけを求めて自分の要望どおりにつくると、自ずとマンションの一室のようなものになってしまうというのはよくある例です。

 建築家は建主の言ったとおりにつくってくれないという話を聞きます。確かに建築作品をつくろうとだけ考えている人も少なからずいますが、建主に言われたとおりにつくる人もいて、むしろ、最近は建築家と名乗るそのような人の方が多いように思います。しかし、本来、建築家はその何れにも偏るものではなく、建主が要望していることはもちろん、要望していないことも含め、ありとあらゆる視点で実直に考え、より良いものを追求してこそ価値があるのではないでしょうか?そして、せっかく新しい暮らしをはじめるのであれば、これまでの生活の仕方や固定観念にとらわれずに、柔軟に「使いやすさ」を含めて空間を考えてみることが建主にも求められているのかもしれません。

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posted by MDS at 00:00| コラム | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする