2015年10月14日

コラム4/家は「街との間」が大事

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 大自然の中であったり、建物が道路や隣家から遠く離れた広大な敷地でない限り、家の中のプライバシー確保は多かれ少なかれ必要になってきます。日常の生活をする上でプライバシーと採光の確保はいずれもとても重要な要素ですが、隣家が迫る都市住宅においてこの相反する両者を両立させることはとても難しく、塀で囲ったり、絶えずカーテンやブラインドを閉めることでプライバシーを確保し、日中も照明を点けることが多いのではないでしょうか。しかし、そのような状況は居住空間としてあまり良い環境とは言えません。日本では住宅の建て替えスピードがとても早く、将来を見越して周辺環境を読み込むことは非常に困難ですが、道路は50年先も恐らく道路であるといったように、ある程度は予測可能です。都市部の住宅において、明るく開放的、かつ、外からの視線を気にしないで過ごせる居住空間をつくるためには、敷地境界をよく観察し、平面および断面の構成に工夫を加えることが必要です。

 そして、プライバシーの確保と切っても切れないものが開口部(窓)で、その取り方により内部空間は全く異なったものになります。例えば、外の風景を印象的に切り取るピクチャーウィンドウ、壁の上部から光を取り込むハイサイドライト、床をなめるように照らす地窓など、様々です。一方で大きなガラス窓が好まれる場合もありますが、谷崎潤一郎の「陰翳礼讃 」にもあるように、古来、日本では陰翳が好まれてきました。落ち着く空間にはある程度の暗さが必要で、技術的に全面ガラス張りの温室のような建物をつくることが容易になった現代においては、陰翳をどのようにつくるか、つまり「影のデザイン」が重要になってきています。明るさを追い求めるばかりで忘れていた陰影の空間を、新たなかたちで取り戻す時期に来ているように思います。


posted by MDS at 00:00| コラム | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする