山中漆器、九谷焼、加賀友禅の見学に行って来ました。
まず、山谷漆工房へ。
石川県の漆と言えば輪島塗が有名ですが、
山中漆器は産業としての漆の産地で、売上高として日本一だそうです。
ガン吹き、樹脂入りなどは漆塗りの本流ではないのかしれませんが、
新たな漆の可能性を模索しているという意味では先進的です。
ちなみに、樹脂を入れると漆が紫外線にも耐えられるようになるようで、
漆塗りのIPHONEカバーなどにその技術が使われいるようです。
普通に漆を塗った場合、曲げるとパリパリとなるそうですが、
こちらの技術を使うとそのようにはならないようです。
提灯に塗ると水をはじく防水の効果もあり、新たな可能性を感じました。
そして、宮吉製陶へ。
LIXILの手洗器のSANCHIBETUシリーズの九谷焼をつくっている会社です。
こちらの特徴は薄い手洗器を型で大量生産することに模索しています。
数年前、LIXILの衛生陶器の工場を見学させて頂いたことがありますが、
それとは全く違う製法で、比較すると面白いですね。
下から圧力を加えて型へ流し込み、一定時間圧力を加え続けるそうです。
薄いところと厚いところで乾燥する時間が違うため、
ひび割れが生じやすく、とても苦労したそうですが、商品化は間近とのこと。
次は、九谷焼きの伝統技法のひとつ、金彩を特に得意とする「錦山窯」へ。
釉裏金彩(ゆうりきんさい)という技法によるお皿。
通常の金彩は釉薬の上に金泥を用い塗布・線描するのですが、
釉裏金彩は金粉や模様に切り抜いた金箔を貼り、
その上に透明釉を掛けて焼きつけたものだそうです。
金箔の厚さが異なるものを使ったりすることで、模様に幅ができます。
表面はコーティングされているので、勿論剥がれません。
こちらは、一枚一枚金箔を貼っているところ。
そして、最後は奥田染色。
加賀友禅の伝統技法を現代にどのように生かせるか模索しています。
こちらは木の練り付け材に染色したもの。
木目に染色の濃淡のある風合いが重なり、
深みのある表情の表面材として利用できそうですね。
夜は石川県庁の伝統振興室の方々と意見交換をしながら懇親会。
建築は設計者と施工者の両者が良い関係の上で成立していて、
建築のクオリティは設計者だけでは担保できるものではありません。
建築業界においても職人さんになりたいという若者が減り、
また一方で難易度の高い高価な仕上げは激減しているために、
日本が築き上げてきたレベルの高い技術が急激に衰退しています。
この状況を食い止めることも建築家の大事な使命であり、
今回の石川県の訪問は、その考えの延長線上にあります。
日本の伝統技術と建築が融合できると良いと願っています。